轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

04 第四分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 页

青空文庫

東風吹く一隊

水夫頭の眼には涙が見えた。この水夫頭も、もう人の子の親らしい年だった。

「よく、いたした。――が、もうよかろう、綱を投げてやれ。許してやれ」

藤吉郎は、囲いへ戻ると、懐紙も筆も投げすてた。そして寒風のふく舳へ出て、屹と鉄の如く、立っていた。船は白波を噛んで進む! 正確に進んでいる! 帆綱はみな張りつめていた。

「部下に恥かしい! ……」

藤吉郎は、痛切に思った。一個の信長は、今や天下に無数の信長を作っていた。そう知る自分もまた、いつのまにか、信長の分身の一つとなっていることに気がついた。

東風吹く一隊

一月の半ばであったが、江南の春はもう梅も綻ぶほどあたたかい。

道々、伊吹のすそや不破の山かげには、まだ雪も深かったが、滋賀のさざなみに照り映える陽を横顔にうけて、湖畔をのたりのたり練ってくると、よいほどに汗ばんで、行列の兵卒たちも、歩きながら眠たげであった。

「重治。お許も睡たかろ」

馬上、藤吉郎はふりむいて、左右に従う五、六騎のうちの一人へはなしかけた。

半兵衛重治は、うつむいたまま、駒にまかせて、主人のあとに従っていたが、面をあげるとニコとして答えた。