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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

04 第四分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 页

青空文庫

人々が、そう危ぶんだのは、織田の援軍が、もう続々と、浜松へ着いたし、なお後続中のその兵量は、どれほどか分らないものであるという諜報を――その日の朝からチラチラ耳にしていたからだった。

敵の真相というものは、敵に迫れば迫るほど、分らなくなってくる。

情報もまた同じであった。目前の敵地から、頻々と、敵の動静は報じられてくるが、その偵察がみな血走った眼ざしと、余りに鋭い耳を持ちすぎていて、却って、大勢を見誤りやすい。

行くゆく沿道の村落で聞く風説などにも、ずいぶん戒心を要するものがある。その中には多分に、敵の流言も混じっているからだった。――けれど、織田の救援軍が、続々と南下して、浜松に合しているというその日の風説は、どうもほんとらしかった。

「もし信長が、大兵をもって、浜松の後詰をして参れば、ここは慎重に、御考慮を要するところではございますまいか」

信玄麾下の諸将は、ひとしく中軍に伺候して、各※(二の字点、1-2-22)から献言した。

「浜松一城へかかって年を越えることにでもなりますると、お味方は当然冬期の長陣となり、日夜敵の奇襲をうけ、兵糧不足と病人の続出にも、疲労困憊してまいるかと案じられまするし……」