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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

04 第四分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 页

青空文庫

やがて行く手の岐阜へ迫れば、当然、家康めは、手兵をひッさげて、わがうしろを塞ぎ、織田を救けるに相違なかろう。さすれば、織田の充分に加勢のなし得ぬいま、直ちに、浜松城をふみつぶして通るが上策ではあるまいか」

諸将はそれに服すしかなかった。主君の言であるばかりでなく、戦術にかけても大先輩たる人の信念である。

だが、各※(二の字点、1-2-22)が隊へ帰ってゆく中で、ひとり山県昌景は、行軍のうえに薄ら寒く曇っている冬の陽を仰ぎながら、口のうちでこう嘆じていた。

「……実に天性、戦がおすきであられる。武将としては、稀な御器量ではあるが……」

一方。

浜松城へ、甲軍の方向急転がつたえられて来たのは、二十一日の夜だった。

信長からの援軍としては。

滝川一益、平手汎秀、佐久間信盛などを武将として、三千ばかりが城下に着いていた。

「思いのほかな少数」

と、失望の声もあったが、家康はさして歓びも不平の色も見せなかった。そして次々と情報の来るあいだに、軍議をひらき、城将の多くも、また織田方の部将のすべても、

「ひとまず岡崎へ退いて」

と、自重を望む中で、かれのみは依然、

「敵に城地をふまれながら、一矢も酬わずに退けようか」