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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
04 第四分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 页
「それゆけ」
と、急遽、一万の兵を先発し、その先発が田神山までゆくとすでに、
――織田の江北攻めは事実。
と知れたので、たちまち二万余の後続軍が発向され、主将朝倉義景も、このたびこそ大事と――その陣に加わったのであった。
なぜこうまで、越前の朝倉が、江北の戦いに大きな震駭をうけるかといえば、いうまでもなく、越前にとって浅井の北近江は、自家の国防の第一線といえる地勢にあるからだった。
宿命の地、小谷城にいる浅井父子は、それまでにも、すぐ近くの地にある横山城(約三里のあいだ)に、木下藤吉郎というものが、信長のために、たて籠って、常に凝視のやじりを向けているので、手も脚も出ない苦境にあったのである。
その藤吉郎が、室町幕府最後の始末がすむかすまないうちに、疾風のごとく畿内の戦場からひっ返し、また直ちに、岐阜へむかって、
「――もう頃あい」
と、戦機の熟したことを報じて、信長の大軍をよび迎えたものである。
その間、実に、半月というまもない迅さだった。
八月初旬。
信長はもう浅井攻めにとりかかっていた。
藤吉郎の案内で、かれは虎御前山の高所へのぼって、作戦をねりあった。