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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
04 第四分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 页
案内する将について、藤吉郎は、一の門から中門までのかなり長い坂道を、至極、無関心にのぼって行く。
大玄関まで来ると、長政の一族で、また老職の任にある藤掛三河守が、迎えに立っていた。
「やあ、しばらくでした」
平常のあいさつに異らない気がるさである。
相識のあいだがらなので、三河守も、にこやかに、
「まことに、お久しいことでござる。こんなことになって、かかるいでたちで、お眼にかかろうとは、夢のようでござる」
と、会釈をかえした。さすがに城門にいる将士の血ばしった眦とちがって、この老将の面には、そうさし迫ったものも見えなかった。
「三河どの。あなたとお眼にかからないことは、お市の方さまが、御当家へお輿入れになられた時からですな。ずいぶん久しいものだ」
「さよう。あれ以来かもしれぬ。……あの折は、嫁君のお輿をお迎えのため、それがしが奉行して、岐阜まで参りましたから」
「……あの日のめでたさや、上下のよろこびにひきかえて、きょうの御両家は」
「宿命とやらいうものでござろう。しかし、いにしえの治乱興亡のあとをみれば、これも武門としては、めずらしいことでもありません。