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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
04 第四分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 页
「城内から、お市の方様、また小さい和子様たち、お幾人も背にしばって、浅井家の傅人三、四名の衆とごいっしょに……」
「えッ……」
信長は、身を揺すぶった。
「――相違ないか。見たのか、その方は」
「われわれどもの人数で、途中からお守り申しあげ、はや、焼け落ちる御城門を、驀しぐらに外まで駈け出しました。どなたも、いたくお疲れのていゆえ、安全なところで、しばしお水などさしあげておりまする」
「……ううむ、そうか」
「そのあいだ、寸刻たりとも、わが君におかれては、御痛念にちがいない、先へお触れ申しあげい――と、主人藤吉郎のいいつけによって、いそいで駈け参りました」
「そうか。ああ」
と、信長はなお口のうちでくりかえして――
「して、その方は、藤吉郎の家中で、なんという者か」
「小姓頭、堀尾茂助にございまする」
「ゆき届いた使い、大儀であった。しばし休め」
「ありがとう存じますが、いまなお合戦のまっ最中、御用のすみました上は」
と、茂助はすぐあとへ取って返し、遠い武者声のなかへ駈けこんで行った。
「まったくの……天佑じゃ」
信長のわきで、誰か、ふとい息と一しょに呟いた。柴田勝家であった。