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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

04 第四分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 页

青空文庫

「笑止笑止」

猿の群れではない。異装な黒い人影である。凩の梢にのぼって手を叩いていた。彼らは、木の実にあらぬ干飯の弁当を喰いながら、毎夜の火事を見物していた。

夜ごとの出火は、藤吉郎の献策で、その家中である蜂須賀党が得意の仕業であるなどとも――近ごろようやく噂されて来た。

夜は怪し火の頻発に悩まされ、昼は防備につかれ、そして、喰う物は尽きるし、防寒の用意もない。

山は、霏々と、雪の吠える冬になった。――二万の兵と、数千の山法師も、今は、霜げた菜のように意気も失せてしまった。

十二月の中旬だった。

武装を解いて、ただの僧衣となった代表者一名が、法師武者四、五名連れて、

「織田殿に会い申したい」

と、陣門へ来た。

信長が会ってみると、それは先に稲葉一鉄と会見した尊林坊であった。――一山の意見が変って来たので、和議を進めたいという口上であった。

「ならぬ」

信長は、一言に退け、

「先にわれより遣わした使者に何と申したか。恥をこそ知れ」

と、陣刀を抜いた。

尊林坊は、愕いて、

「あッ、御無法なッ」

蹌めき立つところを、一閃、戛ッと横に払って、

「法師ども、その首を拾うて帰れッ。