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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

01 第一分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 页

青空文庫

日吉が頷くと、同時に、天蔵は飛びかかって、

「喚くと、生命がないぞ」

と、大きな掌で、彼の口をふさいでしまった。日吉は、もがいて、

「おじさん、おじさん。約束がちがうよ。騒ぎはしないからこの手を放しておくれよ」

賊の天蔵の手に、爪を立てながら、塞がれている口でわめいた。

天蔵は、首を振って、

「いや、おれも御厨の渡辺天蔵だ。汝のはなしを聞けば、この家にも備えがあるそうだが、そうかといって、空手で引き退っては、手下の者へも、顔向けがならねえ」

「だから……だからさ」

「どうするというのだ」

「おらが、おじさんの盗みたい物を、持ち出して来てやるから――」

「汝が取って来ると」

「ああ。……そんならいいだろ。斬ったり斬られたり、危ないことをしなくてもすむし」

「きっとか!」

日吉の喉をぎゅっと締めつけて天蔵が念を押した。

門のあくのが遅いので、門の外では、天蔵の手下たちが、不審を抱いて、恐れたり疑ったりしながら、

「頭。……頭」

「どうかしたんですか」

「門は、どうしたんで?」

などと頻りに、そこの扉をまた、ごとごと揺り出していた。

天蔵は、かんぬきを半分ほど抜いて、その隙間から外へ、