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せっしょうせき
日本の諸国物語
楠山 正雄
楠山正雄『日本の諸国物語』。同一底本的分册已合并为一书。收入:殺生石、葛の葉狐、和尚さんと小僧、長い名、鬼六、物のいわれ、赤い玉、安達が原、雷のさずけもの、白い鳥、忠義な犬、春山秋山、人馬、松山鏡、三輪の麻糸、夢占、瓜子姫子、姨捨山、山姥の話、しっぺい太郎。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,040 字 · 158 页
しばらくすると、どこからか血なまぐさい風が吹いてきて、がやがや人の声がしました。やがて入って来たのは、これも恐しい顔をした鬼でした。そしてもう入って来るなり鼻をくんくんやりながら、
「ふんふん、人くさいぞ。人くさいぞ。」
とわめきました。
「ばかなことをいってはいけません。きっとけだものくさいの間違いでしょう。」
と女はいって、牛や馬の生々しい肉を切って出してやりますと、鬼はふうふういいながら、残らずがつがつして食べた後で、
「ああ、腹がくちくなった。だが、どうも、やはり人くさいぞ。今に探し出して食べてやる。」
といって、またどこかへ出ていきました。
この間坊さんは始終戸棚の中からそっとのぞきながら、びくびくふるえていましたが、その時女は戸棚をあけて坊さんを出してやって、
「さあ、早く逃げておいでなさい。」
といって、詳しく道を教えてくれました。坊さんは涙をこぼして、手を合わせて拝みながら、ころがるようにして逃げていきました。何でも山の中の道を三里ばかり夢中で駆けたと思うと、だんだん空が明るくなって、夜が明けました。
その時にはもういつか村の中に入っていました。