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せっしょうせき
日本の諸国物語
楠山 正雄
楠山正雄『日本の諸国物語』。同一底本的分册已合并为一书。收入:殺生石、葛の葉狐、和尚さんと小僧、長い名、鬼六、物のいわれ、赤い玉、安達が原、雷のさずけもの、白い鳥、忠義な犬、春山秋山、人馬、松山鏡、三輪の麻糸、夢占、瓜子姫子、姨捨山、山姥の話、しっぺい太郎。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,040 字 · 158 页
白い鳥
一
むかし近江国の余呉湖という湖水に近い寂しい村に、伊香刀美というりょうしが住んでおりました。
ある晴れた春の朝でした。伊香刀美はいつものようにりょうの支度をして、湖水の方へ下りて行こうとしました。その途中、山の上にさしかかりますと、今までからりと晴れ上がって明るかった青空が、ふと曇って、そこらが薄ぼんやりしてきました。「おや、雲が出たのか。」と思って、あおむいて見ますと、ちょうど伊香刀美の頭の上の空に、白い雲のようなものがぽっつり見えて、それがだんだんとひろがって、大きくなって、今にも頭の上に落ちかかるほどになりました。
伊香刀美はふしぎに思って、
「何だろう、雲にしてはおかしいなあ。」
と独り言をいいながら、じっと白いものを見つめていますと、それは伊香刀美の頭の上をすうっと流れるように通りすぎて、だんだん下へ下へと、余呉湖の方へと下って行きます。やがてきらきらと、湖の上に輝きだした春の日をあびて、ふわりふわり落ちて行く白いものの姿がはっきりと見えました。それは八羽の白鳥が雪のように白い翼をそろえて、静かに舞い下りて行くのでありました。