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せっしょうせき
日本の諸国物語
楠山 正雄
楠山正雄『日本の諸国物語』。同一底本的分册已合并为一书。收入:殺生石、葛の葉狐、和尚さんと小僧、長い名、鬼六、物のいわれ、赤い玉、安達が原、雷のさずけもの、白い鳥、忠義な犬、春山秋山、人馬、松山鏡、三輪の麻糸、夢占、瓜子姫子、姨捨山、山姥の話、しっぺい太郎。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,040 字 · 158 页
忠義な犬
一
むかし陸奥国に、一人のりょうしがありました。毎日犬を連れて山の中に入って、猪や鹿を追い出しては、犬にかませて捕って来て、その皮をはいだり、肉を切って売ったりして、朝晩の暮らしを立てていました。
ある日りょうしはいつものように犬を連れて山に行きましたが、どういうものか、その日は獲物が一向にありません。そこで心をいらだたせながら、ついうかうか、獲物を探していくうちに、だんだん奥へ、奥へと入っていって、そのうちにとっぷり日が暮れてしまいました。
こう山奥深く入っては、もう今更引っ返して、うちへ帰ろうにも帰れなくなりました。仕方がないので、今夜は山の中に野宿をすることにきめました。一本の大きな木の、うつろになった中に入って、犬どもを木のまわりに集めて、たくさんたき火をして、その晩は眠ることにしました。するうちつい昼間の疲れが出て、人も犬も眠るともなく、ぐっすり寝込んでしまいました。
二
ふと夜中になって、けたたましく犬の鳴き立てる声がしました。驚いてりょうしは目を覚ましました。ぼんやり消え残っているたき火の明りに透してみますと、中でいちばん賢い、獲物を捕ることの上手な犬が、火のまわりをぐるぐる回りながら、気違いのようになってほえ立てていました。