轻松读懂日语经典作品
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しんだちどり
死んだ千鳥
吉川 英治
「婦人倶楽部 臨時増刊」大日本雄弁会講談社、1937(昭和12)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,539 字 · 32 页
『無智にも程がある。生き馬の眼を抜くという言葉のある都会を何と思っているのだ。……ああ、はやく空しく帰ってくれればよいが』
朝飯も食べずに、彼は、戸外の跫音ばかり気にしていた。
午を過ぎても、墨江は帰らなかった。これは放っておけないと賛五郎は考え出し、大小を落すと着流しのまま、家の露地から出て行った。
角の煙草屋の老婆が、姿を見て、薬研の側からあいさつした。賛五郎は水府のたまを一つ求めながら、軽い言葉で訊いてみた。
『ゆうべ酔いつぶれて、寝坊していたので女房の出て行くのも知らなかったが、今朝方、家内の姿を見かけなかったであろうか』
『御新造様でございますか。……さあ? 御新造様はお見かけいたしませんでしたが、ゆうべから、お宅様の露地口に、どうも気になるお人が立っておりましたので、よほど、そっとお知らせしようかと思っていたのでございますよ』
『何? 露地の角に。――してそれは女か、男か』
『編笠を被ったお武家様で、わたくし共へも立寄り、煙草をお求めなされて、いろいろと、お宅様の様子など訊きますので、不気味に思うて居りましたところ、一度何処へか立ち去ったと思うと、又ゆうべも来て立っているではございませぬか』