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ししゃのけんり

死者の権利

浜尾 四郎

「週刊朝日 秋季特別号」1929(昭和4)年9月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,854 字 · 61 页

青空文庫

彼はそこで絶息したのではありますまいか、とすれば秋田は見事に復讐した積りで実は死体を載せた自動車が、崖から落ちるのを息を殺して見ていたことになるわけです。硝子は破れたかも知れませんが、春一が悲鳴をあげたというのは秋田の錯覚でしょう。

ともかく春一が服薬のために死んだか、又はあの災難によって死んだか、自動車が崖から落ちる前に死んでいたか、又は少しでも息があったのか、これは法律家にとっては非常に興味のある所です。

然し、見事に仇を討った積りでいる男にはそう思わしておくのがいいかも知れません。

最後に一つ問題があります。それはこんな犯罪を自白している秋田が、もし捕まった場合、やはりあくまでも私は彼の頼みの通りに、殺意を否認するのが正義に合するのであるかどうかということです。

然し、之はわれわれ法律家の問題であってあなた方探偵小説家の問題ではありませんから申し上げますまい。

ただ私には秋田清吉は永久に捕まらないような気がするんです。それだからこんな話をあなたにしたわけです。

土田氏の話はここで終った。われわれ探偵小説家にとっても最後の問題は大いに興味ある所なのだが、ずるい土田八郎氏は、早くも私の気もちを察して先手を打って逃げてしまったのだった。