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たきぐち
滝口
山本 周五郎
「小説新潮」新潮社、1963(昭和38)年11月〜1964(昭和39)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,815 字 · 99 页
その叔父が園部の人たちを、例のとおり話のとりこにしていたとき、園部鎌二郎がはいって来た。彼は二男で、兄の金三郎とは腹ちがいで二十一歳、躯つきも顔だちも兄とは似ていないし、一族ちゅうの暴れ者といわれていた。――彼がはいって来たとき、益村安宅は鵜殿の叔父と話していたが、誰かがこっちを見まもっているけはいを感じて振り向いた。そして、園部鎌二郎が左手に刀を持ち、立ったままこっちを睨んでいるのを認めた。刀は玄関で預けるのが作法である、それを手に持ち、しかも左手に持っているというのは、挑戦でないにしても、敵意を示すものだということは明らかであった。
「実花を飾って仇花を隠すか」鎌二郎はそう云いながら、するどい眼つきでその席を見まわし、鼻でふんとわらった、「――この法要はごまかしだ、こんな法要はやめてしまえ」
金三郎が「鎌二郎」と制止した。とたんに彼は安宅に向かって指を突き出した。
「あんたはなんのためにこんな法要をするんですか、なんのためです」と鎌二郎が叫ぶように云った、「こうすれば世間や親族の者が、貞心の篤い男だと思うだろうという計算ですか」
安宅はまた鵜殿の叔父のほうへ向き直り、それまで話していたことを話し続けようとした。