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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
方面にて忽ち逼塞。どうあろうと奪い返さねばならぬ」
「でもどのようなご手段で、五十嵐様を、お取り返しなされます?」
菊女は不安そうに熱心に訊いた。
「紀州へ護送する途中において、拙者必ず奪い返しまする」
「鵜の丸殿おいでなさるか」
とこの時玄関から声をかけ、案内も待たず心安そうに、ツカツカはいって来た武士があった。
同志の一人の松浦民弥で、年二十五歳の美貌の武士で、京師の公卿姉小路大納言、このお方の家臣であった。情熱家ではあり正義派ではあり、才気煥発でもあったけれど、若いだけに性急であり、これが唯一の欠点であった。
とはいえ同志中での花形で、誰にでも好感を持たれていた。
京都において活躍している、義党の中心人物でもあった。
主人の姉小路大納言家が、何か政治上の談合があって、幕府の閣老と逢わねばならず、それで秘密に個人の資格で、今よりちょうど一月ほど前に、京都から江戸へやって来た。それに扈従して民弥も来、江戸の同志と久々で逢い、連絡をとっているのであった。
「松浦殿か、どうなされた、例によって性急、あわただしい」
先輩だけにたしなめるように、兵庫はそう云って苦い顔をした。