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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
攻防陣
いざ志水殿、立ち帰りましょう帰るといたそう」
「さようさ」
と但馬も残念そうに云った。
「ことを穏便に済まそうと、わざわざ我ら参ったに、先の出様がこれではのう。……嘉門殿」
と未練らしく、尚しかし但馬は云った。
「もう一思案くださるまいかな?」
しかし嘉門は物も云わず、腕を組んだまま横を向いた。
とうとう但馬も立ち上がった。
「嘉門殿」
と少し鋭く、
「日の入るまでは我ら一同、なお陣地にてお待ちいたす。それまでにご思案変えられましたら、遠慮は不用お申し越しくだされ。いかようにも穏便に計らいましょう。……なろうことなら青塚の郷を、これまで通り平和の里として、成立させとう存ずるほどに。……ご免」
と云うと源兵衛ともども、玄関の方へ足を向けた。
但馬と源兵衛とを送り出すと、嘉門は前庭へ現われた。
嘉門と並んで兵庫も出た。
「談判不調! 戦いだ!」
「いよいよ戦い! 方々用意!」
鵜の丸兵庫も凛然と叫んだ。
攻防陣
つづいて嘉門が絶叫した。
「ご領主河内守様お繰り出しの兵と、紀州藩士とを向こうに廻し、我ら一同戦うのじゃ! ……明暦義党の方々が、どういう目的を持っておられて、どういう仕事をなさるのかは、この嘉門、以前お前達に、充分話して置いた筈じゃ! ……豊臣家の社稷をくつがえし、おのれ代って将軍となり、幕府を建てて権勢に誇り、京都