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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
「おやおやさようでございますか。いかさまこれはごもっとも、さあさあ何なりとお尋ねくだされ……」
と、梶子は笑って愛想よく云った。
素晴らしい美貌で品位もあり、年は若いが世故通らしい、尋常一様の女ではないと、梶子のことを二人の武士は、そう思っていたのであったが、その梶子が砕けた調子で、いかにも愛想よく受け答えるので、気持ちよくならざるを得なかった。
「ではお尋ねいたしますが、犬帰村の農家などに、住居されるご身分とも思われませぬが、何ゆえあのような農家などに?」
「昨夜わたくしども浜松の宿で、焼き出されたのでございますよ。……桔梗屋に泊まっておりましてねえ」
笑い笑い梶子は云った。
「ははあさようでございましたか。……そこであそこへ避難された?」
「はいさようでございます」
そう云いながらも心中では、梶子はおかしくてならなかった。
(その桔梗屋へ放火した奴は、これここにいる三十郎なんだよ。――と云うことをズバリと云ったら、三十郎もこの田舎武士たちも、飛び上がって吃驚りすることだろうねえ)
こう思っておかしくてならないのであった。
「事情それでよくわかり申した。……ところでご両所はご夫婦かな?」