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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
「鵜の丸殿、嘉門殿、稀有のことがございます。……軍用金隠匿のその地点に、多数の人々がおりまする」
「何?」
と兵庫は仰天したように云った。
「軍用金隠匿所に人がいるとな?」
「はい、さようにござります。貴殿よりのご命令ありましたので、拙者数人の郷民を連れ、異変なきやを見定めるため、険を冒して昨夜発足、今暁その地に着きましたところ、その隠匿所の方面より、ガヤガヤ人声いたしますゆえ、これは不思議と木や藪をくぐり、近寄って様子をうかがいましたところ、山男のような荒くれ男ども、幾十人となく集まりおり、焚火をし、魚肉獣肉を熔り、それを肴に酒を飲み、大変もない上機嫌にて、乱舞高歌いたしおるありさま! 呆気にとられおりますると、彼奴ら我々を発見いたし、何やら喚き出したと思う間もなく、竹槍等をひきそばめ、大勢して押しよせ参りましたれば、危険と存じその場を遁がれ、馳せ帰りましてござります」
「フーム」
と兵庫は唸るばかりであった。
と、いつかその背後へ、五十嵐右内が寄って来ていたが、
「関口氏」
と進み出た。
「そのお話たしかでござるかな?」
と、心配らしく質問した。
「間違いござらぬ。