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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
(どうしたらよかろう?)
と途方に迷った。
と、その時洞の外から、
「また変な奴がやって来たぞ!」
「さっきの奴とは違うようだ!」
「一人は侍で一人は女だ!」
と、そういう声が聞こえて来た。
三十郎は不意に立ち上がった。
どうせ菊女はこっちのものだ。性急に退治る必要はない。
宥免状はこっちにある。
宥免状欲しさに何んの菊女は、ここから逃げて行くものか。
変な男女が来たという。
ここの様子を見に来たのかもしれない。
何者であるか不安である。
何者か確めてやらなければならない。
――こう思って立ち上がったのであった。
三十郎は洞外へ出た。
菊女は急場の難を遁がれ、ホッとばかりに安心したが、
(さてこれからどうしたものだろう?)
と、途方にくれざるを得なかった。
宥免状を発見した三十郎は、それを囮にこの後もしばしば、この身の貞操を奪おうと、迫って来るに相違ない。
そうして恐らくその宥免状は、人形の胸などへは入れて置かないで、自身持っているに相違ない。
ではとうてい取ることは出来ない。
(いっそともかくもここを遁がれ、この島にはどうやら住民以外、内地の人もいるらしいから、その人の処へ訪ねて行き、内地へ渡して貰うことにしよう)