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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
「ごもっとも、そうでありましょうとも」
「シッポリどころかこのシケじゃア、ズブズブにぬれてしまうでしょうよ」
「合羽なりとお貸しいたしましょうかな」
「ぬれたい心をご存知ないそうな」
「ぬれてはお体に悪いでしょうな」
「肌と肌とで暖め合うそうで」
「ははあ」
と小平にはわからなくなった。
その間に梶子の仇っぽい姿は、闇の中へかくれてしまった。
が、しかし少し経った時、民弥と二人岩山の北口へ、一散に走って行く姿が見られた。
梶子と一緒に走りながら、民弥の心は亢奮していた。
梶子から事情を聞いたのである。
三十郎が北口にい、菊女が敵方にとらえられたということを。
(三十郎は是非討ちとる! 菊女殿は助けなければならない!)
で、亢奮しているのであった。
北口の見える地点まで来た。
なるほど洞の入り口に、大勢の武士が集まってい、焚火を焚いて雑談している。
「民弥様」と梶子は云った。
「まずわたくしが最初に行き、多勢の紀州藩士たちを、追い払うことにいたします。……追い払いましたら合図しますにより、駆けつけておいでなさりませ」
「さようでござるか、おねがいいたします」
そこで梶子はわざと大仰に、声を立てながら洞口の方へ走り、走りつくと叫ぶように云った。