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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页

青空文庫

「二十人の義党の身代りに、重罪人が首を斬られ、それを義党だといい拵らえ、藩の血気の若武士たちをなだめ、真に生きている義党たちを、われわれの手へ渡すという、この紀州公のお芝居を、梶子殿にはどう思われるかな?」

「お政治はなかなかむずかしいもの、お芝居もまことに結構なものと、そんなように思われます」

梶子は真面目にそう答えた。

「その通り」

と姉小路卿は云った。

「わずか紀州藩の政治さえ、よく執ろうと思えばむずかしい。まして日本の全体の政治は、執るになかなかむずかしい。……明暦義党の人々へも、わしからじっくりというつもりじゃ。……徳川の天下を少人数の力で、叩っこわそうとしたところで、たたっこわれるものではないとな。……こわすにしたところが順を追わねば。……そうだ。順と年月だ。……それよりわしは義党の人々の、これからの身の振り方について、いろいろ考えているのだよ」

「どうなさろうとお覚しめすので?」

「やはり梶子殿の行こうとする所へ、行かせた方がよいようだのう」

「わたしの行く処へ? ××島へ?」

姉小路卿は頷いて、

「建てかけの小屋を――開墾小屋を、とても大袈裟な立派なものとして、それを基礎にして新天地をひらく、これが一番よいようじゃ」