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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
02 中巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 页
独身の板倉は妹と二人で暮してい、二階を撮影室その他の仕事場、階下を住宅に当てているのであったが、行って見ると、彼の家も床上一尺ぐらいまで浸水していて、相当の被害はあるらしかった。貞之助たちは二階の撮影室に請ぜられて、泥水の中から引き上げて来たサイダの接待に与ったりしたが、妙子はその間に泥と雨水の滲み透ったヴォイルの服を脱いで体を拭き、板倉の注意で、彼の妹の銘仙の単衣を借りて着た。貞之助も亦、これまで跣足であったのが、そこを出る時に板倉の薩摩下駄を借りて穿いた。板倉は、もう庄吉もいることだし大丈夫だからと、貞之助が云うのを押し切って、その辺までお送りしましょうと又附いて来たが、田中を出はずれたあたりで引き返して行ったのであった。
幸子は、何処かで妙子と行き違いになったらしい奥畑が、恐らく後で又問い合せに来るのではないかと心待ちにしていたが、その夜はとうとう現れないで、翌朝になって、代理として板倉を寄越した。聞けば昨夜板倉が妙子を送って帰宅してから、やや暫くして啓坊が彼の家に訪ねて来、自分は今夕蘆屋の蒔岡の家に寄せて貰ってこいさんの帰りを待っていたのだが、余り遅いので、そこらまで迎えに行って見るつもりで国道を歩き出したら、ついこの辺まで来てしまった、出来れば野寄まで行って見たいのだけれども、もう真っ暗になって