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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

02 中巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 页

青空文庫

三十四

「そんなら、もう帰らして貰いまっせ。今夜は見送りによう行かんかも知れへんよってに、―――」

と、食休みもしないで帰って行った。

三十四

翌朝幸子が帰宅して、雪子の口から聞いたところの概略を記すと、―――

一昨日の夕方、板倉さんの妹さんと云う方から雪子娘さんにお電話でございますと云われた時、雪子は板倉が入院しているとは知らなかったし、その妹と云う人ともまだ会ったことがなかったので、妙子の間違いではないかとも思ったが、いいえ雪子娘さんにと申しておられます、と云うことなので、出て見ると、こいさんが東京へ行ってはりますことも存じておりますので、えらい失礼でございましたけど、実は兄がしかじかこうこうでございまして、と云うのであった。耳の手術をしたのは妙子が立った前日で、その日妙子が見舞いに来た時分には機嫌よくしていたのだけれども、夜になってから脚が痒いと云い出したのが始まりで、最初は掻いてやりなどしていたが、その明くる朝あたりから「痒い」が「痛い」になり、だんだん痛みが激しくなって来た。そして、そう云う状態で三日を経過したのであるが、ますます苦痛を訴えるばかりで良くならない。