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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

02 中巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 页

青空文庫

ないのだから、ちょうど好い機会でもある、と云うことになって、幸子と雪子と悦子の三人で八月怱々に立つ積りでいたところ、おさく師匠の病気のことなどがあって延び延びになり、もう今月は行けるかどうか分らないと云っていたのであった。でも、ペータア父子が近日横浜を出帆するなら、それを見送りがてら行くのもよいと、幸子はそうも思い付いたが、生憎と又、出帆の当日が地蔵盆に引っかかるので、彼女はどうしても本家の姉の代理として、毎年行われる上本町のお寺の施餓鬼へ行かなければならなかった。で、仕方がないので十七日の日にペータアのために送別のお茶の会をして、ペータア、ローゼマリー、フリッツ等を招いたが、一日置いて、十九日には、シュトルツ家で子供たちのために名残のお茶の会が催され、ペータアやローゼマリーの友達である独逸の少年少女たちが集った中に、唯一の日本人として悦子も呼ばれた。その翌日の午後、ペータアはひとりで蒔岡家へサヨナラを云いに来、家族の者に一々握手をして、自分は明日の朝パパと一緒に三宮から横浜へ向けて立つことになった、亜米利加を廻って独逸へ着くのは九月の上旬になると思うが、独逸ではハンブルクに住む筈であるから、どうか今度はあなた方の方から是非ハンブルクへ来て下さい、と云うような挨拶をしたが、亜米利加を通る時に何かエツコさん