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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

02 中巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 页

青空文庫

辰雄は、そしたらまあお前達は行きなさい、僕は留守番してよう、と云って動じないので、最初に輝雄と、哲雄と、幸子と、雪子と、悦子と、お春とが先ず避難した。鶴子は夫を置いて行くのも気懸りなので、どうしてよいか迷っていると、お春が一人引っ返して来て、さあ坊ちゃん参りましょうと云って、とッとと正雄を背負って行き、又引っ返して芳雄を背負って行こうとするので、とうとうじっとしていられなくなって、自分が梅子を抱き、芳雄をお久に背負わせて避難した。その間、お春の活躍は最も目ざましく、二度目に引っ返して来た時などは、何処かの物干台が路次へ崩れ落ちて来て、もう少しで下敷きになるところであった。彼女はお久が芳雄を背負ったのを見ると、秀雄坊ちゃんいらっしゃいと云って、―――その児は大きいから宜しいと云うのも聴かずに、―――怯えている秀雄を背中に乗せて走った。

そんな風にして、お久までが逃げて来てしまったので、それから三十分程立つと、何と思ったか辰雄もバツの悪そうな顔をしながら、私もお邪魔に伺いましたと云って、勝手口から這入って来た。風はその後もひとしきり吹き募って、戸外には相変らず物凄い呻りが聞えていたが、実際小泉方へ来て見ると、柱も壁もしゃんとしていて、家が潰れはしないかなどと云う懸念は、全然起りようもなく、普請の良い悪いでこんなにも