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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
02 中巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 页
休みしては渇きを癒さねばならなかった。お春は夥しい買物の包を持たされて、荷物の中から首を出したようになりながら、今日も顔じゅうに汗を沸かして三人の跡から附いて来たが、三人も皆めいめいに一つか二つ提げていた。そしてもう一度尾張町へ出、最後に服部の地下室で又幾つかの買い物をすると夕飯の時刻になったので、ローマイヤアは気が変らないからと、数寄屋橋際のニュウグランドへ上ったのは、宿へ帰って食べるよりも時間が省けるからでもあったが、一つには、今夜限りで又暫くは会えなくなるであろう雪子のために、彼女の好きな洋食の卓を囲み、生ビールを酌んで当座の別れを惜しもうと思ったからであった。それから大急ぎで宿へ帰り、荷纏めをし、東京駅へ駈けつけて、見送りに来ていた姉と待合室で五分ばかり立ち話をし、午後八時三十分発急行の寝台車へ乗り込んだ。姉と雪子とはフォームまで附いて来たが、悦子が外へ降りて来て雪子としゃべっている隙に、姉はデッキに立っている幸子の方へ寄って行きながら、
「雪子ちゃんの縁談、あれきりかいな。………」
と、小声で云った。
「あれきりやわ、………そのうちに又あるやろとは思うけど。