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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

02 中巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 页

青空文庫

との関係を察していて、気を廻しているものに違いなかった。

「今行きます。応接間にお通ししときなさい」

手が花の蜜でべとべとしているので、彼女は洗面所へ行って蜜を洗い落して、二階でちょっと顔を直してから出た。

「えらいお待たせ致しまして、………」

一と目で純英国製と知れる、殆ど白無地に近い明るいホームスパンの上衣に鼠のフランネルのズボンを穿いた奥畑は、這入って来た幸子の姿を見ると、少しわざとらしい感じのする、仰々しい急激な動作で椅子から立ち上りながら「気を付け」のような姿勢をした。妙子より三つか四つ年上であった筈であるから、今年三十一二ぐらいになるであろうか、この前会った時はまだ幾分か少年時代の面影を留めていたのに、この一二年の間に大分肥満したらしいのは、追い追い紳士型の体つきに変りつつあるところなのであろう。でも、あいそ笑いをして此方の顔色を窺い窺い、心持ち頤を突き出して訴えるような鼻声で話しかける様子に、矢張「船場の坊ち」らしい甘ったるさが残ってはいた。

「どうも御無沙汰してしまいまして、………一遍お伺いせんならん思うてましてんけど、お許しのないのんに上ってええのんやらどうやら思うて、………お宅の前までは二三遍参ったんですが、よう這入らんとしまいましてん。