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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

02 中巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 页

青空文庫

でありながらくろうとに交って精進する熱心さに絆されたせいもあるが、一つには山村舞の頽勢を挽回するには、従来のような引っ込み思案では駄目であることを悟るようになった結果でもあるらしかった。だがそうなると、今迄は稽古場の関係で諦めていた悦子までが習いたいと云い出したので、娘ちゃんが稽古おしやすのであったらこれから月に十日ぐらいは上らして戴いてもよろしいと、勧め上手に云ってくれるおさく師匠の口添えもあって、彼女もこの機会に手ほどきをして貰うことになった。

おさく師匠の来る時刻は、その日その日で違っていて、大体明日は何時に来ますと云う約束をして帰るのだけれども、時間が一向正確でなく、一時間も二時間も狂うことがあり、天気が悪いと来ないでしまうことなどもあるので、忙しい中を早くから来て待つようにしていた妙子も、しまいには馴れて、おさく師匠が見えてから電話で知らして貰い、悦子が稽古している間に夙川から駈け付けると云うようにした。でも病身なおさく師匠は、事実此処まで出かけて来るのが容易なことではなかったのであろう。先ず応接間で一服しながら二三十分も幸子と世間話などをして、やがて徐ろに、テーブルや椅子を片寄せた食堂の板の間で稽古するのであったが、口三味線で地を唄いながら型を示すのに、息ぎれがしていかにも苦しそうに見える折が