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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
02 中巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 页
ながら妹たちのことであなたにまでいろいろ御心配をかけて申訳がないと、そんな風な挨拶であったが、無論即答が得られる筈のものではないので、貞之助はそう云う姉の言葉を齎して帰って来たに過ぎなかった。幸子は、そうは云っても悠長な姉のことではあり、義兄も事を決定するのに手間の懸る方であるから、直ぐには返事が来ないであろうことを予期していたが、それきり十日以上たっても何の音沙汰もなく、十一月もとうとう下旬になってしまった。あなたから一遍催促して見てと、貞之助に云っても、僕は皮切りをしたのだから後は知らないと、逃げを打つので、幸子から、こいさんの話はどうなったでしょうか、行くとすれば出発は正月なのだから、と云ってやったけれども、矢張梨の礫であった。こないなったら、こいさん東京へ行って来なさい、その方が話が早いで、と幸子が云うので、妙子もそれに極め、二三日中に出かけるつもりにしていると、漸く十一月三十日になって、次のような手紙が届いた。―――
その後御無沙汰していますがお変りもありませんか。悦ちゃんの神経衰弱は経過よろしき由貞之助さんから伺って安心しました。もう本年も残り僅かになり、私は東京で二度目のお正月を迎えることになりますが、又あの恐ろしい冬が近づいて来たと思うと、ぞっとします。