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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
02 中巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 页
三
「はあーい」と返事をしながら、碧い眼を持つ少女と少年の相手をしているのであった。
三
「こいちゃん、写真屋さんが這入らしてもろても構いませんか云うてはるよ」
悦子は今日の会の御愛嬌に、「弥生は御室の花ざかり」を一番最初に舞わされたのであったが、まだその着附と化粧のままで、楽屋になっている二階の八畳へ上って来た。
「何卒、―――」
「雪」の衣裳の着附がすっかり出来上ったところで、転けないように右手で床柱に掴まりながら、立ったままでお春に足袋を穿かせて貰っていた妙子は、潰し嶋田の首は動かさずに、宙に据えていた眼だけをちらと其方へ向けた。悦子はいつも洋服を着ているこの若い叔母が、用意のために十日ほど前から日本髪に結って和服を着出したのを知ってはいたものの、さすがに今日の変り方には呆気に取られたように眼を見張った。妙子が着ている衣裳と云うのは、実は本家の姉の鶴子が昔婚礼の時に用いた三枚襲ねの一番下の一と襲ねなのである。妙子は、今日のはお浚いと云っても小人数の集りであるし、それでなくてもそう云うことは差控えるべき時局下であるから、新しく衣類を調える迄もないと考えて、幸子と相談した結果、本家の姉のこの衣裳がまだ上本町の蔵に置いてあることを思い出して、それを借りることにしたのであったが、父が全盛時代に染めさせたこの一と揃いは、