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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
02 中巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 页
の三味線は覚束ないので、琴で弾いていること、そんな風にしていると、こいさんも憎めないけれども、この人のためには近来何かと気を遣わされることが多いので、手紙にはちょっと書けないが、雪子ちゃんが来てくれたらいろいろ聞いて貰いたいことがあること、悦子も、去年の舞の会の時にも姉ちゃんはいなかったから、今度はどうしても見に来なければいけないと云っていること、等々を云ってやった。が、鶴子からも、雪子からも、何の返事も来ないので、又この前のように不意に来るのではないか知らん、などと話し合っていたが、紀元節の日の夕方、妙子が今日は衣裳を附けて裾を引いて舞って見ると云って、洋間で稽古していると、
「あ、姉ちゃん」
と悦子が、誰よりも先に呼鈴の音を聞き付けて駈けて出た。
「入らっしゃいませ。皆さん此方においででございます。―――」
と、後からお春も立って行って、応接間のドーアを開けた。
雪子が這入って来て見ると、長椅子一つだけを残して、テーブルや肘掛椅子を全部取り除け、絨毯を一方へグルグル巻きにして片寄せ、妙子が部屋の中央に、潰し嶋田に鴇色の手絡を掛けた頭で、この間の手紙にあった衣裳、―――葡萄紫に雪持ちの梅と椿の模様のある小紋を着て、傘を持って立っていた。