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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

02 中巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 页

青空文庫

「阿呆らしい、あたしの頭に合うかいな」

幸子が冗談を云ったのを、雪子は機嫌の好い笑顔で受けた。そう云えば彼女の頭の鉢は、毛が豊かなので見たところでは分らないけれども、飛び抜けて容積が小さいのであった。

「雪子ちゃん、ええ所へ来た」

と、貞之助が云った。

「―――今日はこいさん鬘が出来て来たのんで、一遍ちゃんと衣裳を附けて舞うて見よう云うことになってん。それに廿一日は火曜日やのんで、僕見に行けるかどうか分らんよってに、今日本式に舞うて見せて貰おう思うて」

「悦子も廿一日は行かれへんねん、残念やわ」

「ほんに。何で日曜にせえへんのんやろ」

「時節柄、余りぱっとせんように、云う趣意かも知れんな」

「そんなら、中姉ちゃん、―――」

と妙子が、傘を開いて柄を真っ直ぐに、右の手に持ちながら云った。

「―――今のとこ、もう一遍弾いて見て欲しい」

「そんなこと云わんと、初めからやりなさい」

貞之助が云う尾に附いて悦子も云った。

「そうやわ、こいちゃん、姉ちゃんに見せたげて、―――」

「二遍舞うたら、こいちゃんもうへとへとやわ」

「まあ、稽古や思うて、もう一遍初めから舞い。―――」

と、幸子も云った。