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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
02 中巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 页
彼は、店員達が自ら進んで血液型の検査を受けることを申し出た時、僕も見て下さいと云って、検べて貰っていた。それはどう云う料簡なのか分らないけれども、彼には一体そう云う風なおっちょこちょいの所があるので、ただ何となくそんなことを云い出したのに過ぎないであろうと、妙子には思えた。妙子が血液型の検査を受けたのは、嫂や妹が受けたので、勢い自分も受けなければ工合が悪いようになったからであったが、親たちを始め嫂も妹も、こいさんはお止めになって下さいと、頻りにそう云ったくらいであった。
「脚は何処から切ったのん」
三人は、湯上りの寝間着姿で食卓に就いている妙子の周りに集って、又暫くその話を続けたが、幸子が聞くと、
「この辺からやわ。―――」
と、妙子はテーブルの下から脚を出して、寝間着の上から掌で大腿部を切る真似をして見せ、又慌ててそこを祓う真似をした。
「こいさんそれを見てたのん」
「ちょっとぐらい見たわ」
「こいさん、手術に立ち会うたんか」
「うち、手術室の隣の部屋で待ってましてん。―――そんなら、そこが硝子戸になってたよってに、手術してるとこが見えるねんわ」
「見えたにしたかて、ようそんなとこ見てられたなあ、こいさんは」