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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
02 中巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,628 字 · 371 页
と呼んで話し始めた。
「さあ、どんなことでございましょうか」
「………姉さんは勿論御承知のことと存じますけど、近頃こいさんは玉置徳子の学校へ通うて洋裁の稽古してはりますな。それはまあええとしましても、そのために人形の製作の方がだんだん不熱心になって来て、最近殆ど仕事らしい仕事してはれしません。そんで僕、どう云う考か知らん思うて聞いてみましたら、もう人形みたいなもん厭になった、もっとみっちり洋裁を習うて、将来はその方を専門にやる、今のところ、人形の方もたんと注文受けているし、弟子もあるさかい、一遍に止めることは出来んけど、追い追い弟子に跡を譲ることにして、自分は洋裁の方で立って行きたい、それには姉さん達の諒解も得て、半年か一年ぐらい仏蘭西へ遣らしてもろて、彼方で修業したと云う肩書を得て来んならん思うてる、云うてはりますねん。………」
「へえ、こいさんそんなこと云うておりますか」
幸子は妙子が人形製作の余暇に洋裁の稽古をしていることは聞いていたけれども、今奥畑が云ったようなことは全く初耳なのであった。
「そうですねん。―――僕こいさんのしやはることに干渉する権利あらしませんけど、折角こいさんが自分の力であれだけのものにしやはって、世間でもこいさん独得の芸術として認めるようになった仕事を、今ここで止めてしまやはる云うこと