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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
01 上巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 150,580 字 · 287 页
十四
そして、よくよく待ちかねたと見えて、まだ会ったこともない本家の姉を直接電話口へ呼び出して催促をしたとやらで、驚かされた姉が直ぐその後から幸子に電話で知らせて来た。幸子は自分より又一層気の長い、物を尋ねられると五分も立ってから返答をするような本家の姉の、面喰った顔が眼に見えるようで可笑しかったが、井谷は姉に向っても、好い話は邪魔が這入り易いからと云う文句を使って、いつもの早口で大いに説き付けたらしいのであった。
十四
そうこうするうち、月が変って十二月に這入ってからの或る日、本家の御寮人様から電話と云うので、幸子が出ると、先達ての縁談のことについて、大そう調べがおそくなったけれども、漸く大体のことが分ったから、今日此方から出向いて行く、と、そう云って電話を切りかけてから、姉は又ちょっと言葉を継いで、ええ話とは違うさかいに、喜ばんとおいてほしい、と云うのであった。幸子はそう断られる迄もなく、姉の声を聞いた最初の瞬間から、ああ又今度もいけないのだなと感じていたが、電話を切って応接間へ戻って来ると、ひとりでに溜息が出て、安楽椅子へどっと腰を落してしまった。今迄にも幾度こう云うことがあったか知れず、土壇場まで来て断るのが殆ど馴れっこのようになっていたので、その都度幸子はそんなにも力を落したことはなかったのであるが、今度