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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
01 上巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 150,580 字 · 287 页
二十六
であった。そう云う訳で今度はあまり張合いのない縁談だけれども、それが雪子を呼び寄せる表面の口実であってみれば、兎も角も「見合い」をさせるだけはさせなければ、―――と、云ったようなところが幸子たち夫婦の正直な気持であった。そして、どうせ纏まりそうもないものなら、厭なことは知らせる迄もないので、奇癖の件は雪子に云わないで置くことに相談をきめていた。
二十六
ケフカモメデタツ」ユキコ
悦子は学校から帰って来ると、洋間に雛人形を飾るべく、母とお春に手伝って貰って雛段を組み立てていたが、そこへ待たれていたこの電報が届けられた。
一般に、関西の雛の節句は一と月おくれにする習慣で、本当はまだ一箇月早いのだけれども、四五日前に近日出て来ると云う雪子からの便りがあった時、たまたま妙子が悦子のために菊五郎の道成寺の人形を拵えて来たので、幸子がふっと思いついて、
「悦ちゃん、この人形と一緒にお雛さん飾ろう。―――」
と、云いだしたのであった。
「―――お雛さんかて、姉ちゃんを歓迎したいやろさかいにな」
「何で、お母ちゃん。お雛さんは来月やないの」
「まだ桃の花が咲いてへんよ」
と、妙子も云った。