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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
01 上巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 150,580 字 · 287 页
十七
と、そう云って可笑しがったりした。
十七
そんなことから、最初は真面目でよばれに行く気はなかったのだけれども、妙子の話でだんだん好奇心が募って来たのと、先方から再三招待があって断りにくくなったのとで、とうとうキリレンコの家へ出かけて行ったのは、春とは云ってもお水取の最中の冴え返った日のことであった。先方では家族が揃って来てくれるようにと云っていたが、帰りがおそくなることが分っていたので、悦子は止めさせ、雪子も悦子のお附合いに留守番をすることになって、貞之助夫婦と妙子の三人だけで出かけた。阪急の夙川の駅で下りて、山手の方へ、ガードをくぐって真っ直ぐに五六丁も行くと、別荘街の家並が尽きて田圃路になり、向うに一とむらの松林のある丘が見えて来る。キリレンコの家は、その丘の麓に数軒のささやかな文化住宅が向い合って並んでいる中の、一番小さな、でも白壁の色の新しい、ちょっとお伽噺の挿絵じみた家であった。すぐカタリナが出て来て、階下の二た間つづきの奥の間の方へ案内したが、まん中に据えてある鋳物のストーブを囲んで主客四人が座を占めると、もう身動きもならないくらいな狭さであった。