轻松读懂日语经典作品
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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
01 上巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 150,580 字 · 287 页
真っ先に「お婆ちゃん」が、こまごました買い物の包みを五つ六つ提げて、すっと玄関を通り抜けて台所へ消えて行った後から、兄のキリレンコが五十がらまりの紳士を連れて食堂へ這入って来た。
「今晩は。もう御馳走になっています」
「何卒々々、………」
と、お辞儀をすると同時に揉み手をしながら、西洋人の男にしては小柄できゃしゃな体格をしたキリレンコは、羽左衛門型の細面の両頬を、春寒の夜風に吹かれて来たらしく真っ紅にして、何か露西亜語で妹と二言三言云い合っていたが、日本人には「ママチカ、ママチカ」と云う語だけが聞き取れて、多分露西亜語の「母」の愛称なのであろうと推量された。
「わたし、今ママと神戸で会って一緒に帰って来たんです。それからこの人、―――」
と、キリレンコは件の紳士の肩を叩いて、
「妙子さんこの人御存じですね。―――私の友達のウロンスキーさん」
「はあ、私知ってます。―――これ、私の兄さんと姉さん、―――」
「ウロンスキーさんと仰っしゃるんですか、『アンナ・カレニナ』の中に出て来ますね」
と、貞之助が云った。
「おお、そう。あなたよく知っています。あなた、トルストイ読みますか」