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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
01 上巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 150,580 字 · 287 页
なるほど、今のところ雪子は役に立っていてくれるけれども、雪子がいないからと云って悦子の躾に困るような自分ではない積りであるし、早晩嫁に行く雪子であってみれば、そう云う人を当てにしている訳もない。悦子も雪子がいなくなれば淋しがりはするであろうが、聞き分けのない児ではないから、当座の寂寥に堪えて行くことは明かで、雪子自身が案じているであろうように、泣いたり駄々を捏ねたりはしまい。自分は婚期におくれている妹を慰めてやりたいと思うだけで、義兄に楯を突いてまで引き留める気はないのであるから、本家から連れ戻しに来た以上、その命令に従うように本人に説きすすめるのが道でもあるし、又、兎も角も一度帰って貰って、雪子なしでも立派にやって行けるのだと云うところを、雪子にも、世間にも見て置いて貰う方がよいかも知れない。―――
「ここは一遍、富永の叔母ちゃんの顔を立てて、帰りいな」
雪子は無言で聞いているだけであったが、幸子の意志がそうはっきりしているからには、それに聴従する外はないと観念しているのが、様子で分るような打ち萎れた姿勢をしていた。
「東京へ行ったかて、行ききり云うことあれへんさかい、………それ、いつか陣場さんの持って来やはった話なあ、あれかて、あのままになってるけど、もし見合いでもすることになったら、是非帰って来て貰わん