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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

01 上巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 150,580 字 · 287 页

青空文庫

四

「そうか」

「あんた達のこと、あたしには分ってるけれど、―――今のとこ何も云わんと、任しといてえな」

「ふん」

「今持ち出したら、雪子ちゃんが可哀そうやよってにな」

「ふん」

「分ってるやろ、こいさん」

妙子は間が悪いらしく、強いて無感覚な表情をして「ふん」「ふん」とばかり云っていた。

四

はじめ幸子は、妙子と奥畑との最近のいきさつを雪子にも誰にも話さずにいたが、或る日又二人が散歩して夙川から香櫨園へ行く途中阪神国道を横切ろうとすると、通りかかった阪国バスから雪子が降りて来て運悪く出遇ってしまったと云うことを、雪子は黙っていたけれども、そのことがあって半月も過ぎた時分に妙子から聞いた。で、そうなってから云わずにいて妙子が変に誤解されるようなことがあってもと思ったので、この間奥畑の訪問を受けて以来の事訳を語り、雪子ちゃんの縁がきまってからでよいので、急ぐことではないけれども、いずれあの二人は一緒にさせなければならないであろう、その時になったら本家の諒解を得るために雪子ちゃんにも一と骨折って貰わなければ、―――と、云うように話して雪子の顔に現れる反応を窺ったが、雪子は別段のこともなく物静かに聞いてしまってから、順序が違うと云うだけの理由で延ばすのなら、そんな気がねをせず、先に二人を一緒にしたらよいと思う、私は後になったところ