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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

01 上巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 150,580 字 · 287 页

青空文庫

先ずどう見ても五十四五歳ぐらいには見える。実際の歳は貞之助より二つしか上でないと云うのに、野村の方がたしかに十は上に見えよう。まして雪子とでは、彼女がまた実際よりも七八歳も若く、ようよう廿四五としか見えないので、まるで父子のような差があって、こんな所へこの妹を引っ張って来たと云うことだけでも、幸子は何か妹に済まないことをしたような気がした。

六人は双方の紹介が終ってから、そのままお茶のテーブルを囲んで話し合ったが、巧い工合に雑談が弾んで来ないで、時々皆が黙り込んでしまった。それは野村と云う人が、何処か取り着きにくい感じのするせいでもあるが、介添役の陣場夫婦が又、野村に対してひどく遠慮して、固くなっている風があった。多分陣場にして見れば、相手が恩人たる浜田の従弟であると思うところから、自然に出て来る態度なのであろうが、それにしても少し卑屈過ぎるように見える。いつもであると、こう云う時に座を白けさせないくらいな如才なさは、貞之助夫婦の方で持ち合せているのだけれども、今日は幸子が気勢が上らず、貞之助も亦妻の気分に影響されて多少陰鬱になっていた。

「野村さんの県庁でのお仕事は、主にどう云うようなことを、―――」