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うつくしいにほんのれきし
美しい日本の歴史
吉川 英治
「週刊文春」1959(昭和34)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,561 字 · 37 页
どうも収賄の淫婦を責めるに急で、贈賄者の方の間男は、これを逃がしもしていないが、とかく軽く見ている風が今の世間には無くもない。
賄賂というとよく寛政年度の田沼意次が例に出されるが、謂うところの田沼時代でも、そんな時代を作った罪の一半は、意次の幕閣をめぐる猟官連中だの、一般の民間側にもあったのだと言いたくなる。一体、どの程度、田沼という男が無知で強欲だったかしらないが「匏庵遺稿」「甲子夜話」「五月雨双子」など、彼の収賄ばなしには、みなおもしろがってその醜聞を千載に書き遺している。
大老の井伊直幸でさえ、大老の職をえたのは、彼へ贈賄したお蔭だと、もっぱら言われた。そしてその贈り物には、四方の盤上に載せた金銀細工の田舎家の盆景が送られた。その敷き砂まで砂金や豆銀であったという。
また、月見の夕。青竹の籠に鱚と野菜をあしらった物を、台所へ送り届けた町人がある。一見、軽い音物のようだったが、その中の青柚子一箇に刺してあった小刀を抜いてみたら、当時千金とも評価されていた名工後藤の秋草彫りの小柄だった。
さらに田沼が下屋敷を新築した時、その稲荷堀の下屋敷の庭を見ながら、ある朝、彼が、