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うつくしいにほんのれきし
美しい日本の歴史
吉川 英治
「週刊文春」1959(昭和34)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,561 字 · 37 页
蜂飼いの大臣
休暇も月に五日間をと求めているのは、まず現代の週休並みだ。想像以上、ひどかったのは衣服であろう。繊維は実に貴重だったのだ。皆垢じみたのを着、脂肪臭く、裾切れやボロの穴なども、可笑しくなかったほどだったに違いない。
問題は「酒」である。薬用にという陳弁の仕方はどうも苦しいが「三日に一度」とあるなどは全く可愛らしいものだ。何しても、これは大勢の写経生らが案をとり囲んで、大大論をやりながら、がやがや書くにまかせて書いて行った全員要望の下書きらしい。それだけにまた自然でもある。そしてその草稿その物は、正倉院関係の諸書や、また大日本史大系などにも写真版になってまま収載されているが、よく見ると、机の向う側から誰か悪戯書きしたらしく、べつな筆で「酒」の一字が、逆さ書きに付け加えられているのを発見しよう。よくよく、中でも喉を鳴らしていた一人の男がやった芸にちがいない。
蜂飼いの大臣
「十訓抄」に京極の太政大臣宗輔の噂がみえる。ふと、昼飯の食パンに蜂蜜を塗りながら、それを思い出したら、私は独りでおかしくなってきた。
宗輔はたくさんな蜂を飼っていたという。蜂蜜を採っていたとは十訓抄も書いていないが、とにかく蜂を上手に飼い馴らし、