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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

「級長」

「はい」と松村君が立った。

「日をきめて近々やりたまえ」

「はあ」

「それではこれでおしまい。そら、鐘が鳴った。えらいものだろう?」

と橋本先生は時間きっかりに授業をおわった。さすがは数学の専門家だ。

「おもしろい先生だなあ」

「あんなのを瓢箪鯰っていうんだよ」

「鯰に似ていらあ、ひげが」

「なんでも数学へ持っていってしまう」

「とてもかなわないなあ」

と生徒たちは不平もなかった。折りから雨降りだったので運動場へ出られない。教室の中にブンブンブンブン蜂の鳴くような声がみなぎった。

級長の松村君は細井君や高谷君と相談して、昼休みの時間に、

「今週土曜日放課後ただちにクラス会を開きますから、奮ってご出席ください。会費十五銭」

と黒板に発表した。それを見ていた堀口生は、

「おい、松村、チョークを貸せ」といって、

「諸君、奪ってご欠席ください」

と大きく書き足した。

「奪ってご欠席ってのはいったいどんなことをするんだろう?」

と伊東君が笑った。

「なんでい? なにがおかしいんだ?」

「まちがっているからさ。奮ってだろう? 奮ってご欠席だろう?」

「奮ってよ」

と堀口生は両方見比べて気がついた。