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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

喧嘩口論すべからず

「おもしろいよ。僕はさっきから考えていたんだ。晩ごはんのとき、お父様が見つけてきっとなんかおっしゃる」

と照彦様は書きいれにしていた。

喧嘩口論すべからず

小使い部屋の裏の喧嘩は不良と善良の決闘だった。不良は負けた。堀口生は前非をくいてあやまった。しかし勝った方も負けた方もそれだけではすまなかった。

正三君はおやしきへ帰るとすぐに洗面所へいって鏡を見た。なるほど、照彦様のいったとおりかっぱだ。上あごがはれあがって鼻の高さに達している。歩くとなにかにつかえるような気がしたのはこれだった。唇をひろげてみたら、裏がさけていた。痛い。

「どうだい?」

と照彦様が心配してはいってきた。

「ここですよ」

と正三君は唇を裏がえしてみせた。

「これは大変だ。お医者さまに見てもらう方がいいよ」

「なあに、大丈夫です」

「いけない。僕お母様に申しあげる」

「もうなんともないんです。食塩でうがいをすれば直ります」

と正三君は元気がよかった。

「それじゃ僕もらってきてやる」

「どうぞ願います。こんな顔してお台所へゆくと女中たちが笑います」

「ここで待っていたまえ」

と照彦様は出ていった。

若様がたはお台所へはいると叱られる。