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くしんのがくゆう
苦心の学友
佐々木 邦
「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页
正三君のかけひき
しかし若様がたよりも家庭教師たち、家庭教師たちよりも安斉先生が一生懸命だ。若様がたが内証話をすると、
「エヘン、エヘンエヘン」
とくる。それでもだまらないと、
「散乱心を戒めてえ! 照常様」
と名をさされるから、皆ビクビクものだ。
内藤君の方はあさってからで、照彦様の一番おきらいな算術が初っぱなになる。二人は黒須先生について例題をやっている。内藤君は早い。ほんのおつきあいに控えているようなものだ。照彦様は考えるふうをして先生の助言を待っているから手間がとれる。
「内藤君、ちょっと学監室へ来てください」
と安斉先生が折りをみて呼んだ。先生のちょっとは若様がたも恐れている。たいていお説法だ。ほめてくださることはめったにない。内藤君は鉛筆をおいて学監室へお供した。
「さあ」
と先生は椅子をすすめた。
「これで結構です」
「いや、小言ではありません。安心しておかけなさい」
「はあ」
「今日はお父さんがお見えになりましたよ」
「はあ、先刻奥様からも承りました」
と正三君は腰をおろして膝に手をついた。お父さんが先生のところへ相談にくることはこの間帰った時のうちあわせだった。
「いろいろと承りました。