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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

明るい年頭

「おめでとう!」

と叫んで、照彦様が内から突進したものだから、鉢合わせになった。

「痛い!」

「おめでとう!」

「新年おめでとうございます」

「僕が勝った」

「今年も相かわらずお願い申しあげます」

「ああ、相かわらず。きみ、僕が勝った」

「若様はおずるいです。かくれていらっしゃるんですもの」

と正三君は不服だった。西洋では新年の挨拶は早くいいだした方が礼節上の勝利者になる。その話を英語の先生の矢島さんから聞いて、二人ともひそかに心がけていたのだった。

「ハッハハハ。僕は鼻を打った」

「私は口です。それだからいいおくれたんです」

「僕は先にきみを見つけた。きみが廊下で富田さんと話していたとき、しめたと思ってかくれたんだ」

と照彦様は得意だった。

「僕は学習室の方ばかり用心していたんです」

「うれしいなあ。元日早々勝っちゃった」

「しかし若様は新年とおっしゃらなかったです。ただおめでとうじゃなんのことかわかりません」

「それは、きみ、ずるいよ。元日におめでとうといえば、新年のことはわかっている」

「それじゃこれは僕の負けとしておきましょう」

「あたりまえさ。僕の方は先に二度もいっているんだもの。