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くしんのがくゆう
苦心の学友
佐々木 邦
「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页
困った立場
と高谷君が猛然として立ちあがった。
「なんですか?」
「僕、困ります。僕が喧嘩をしたんですから、僕、困ります」
「それでは堀口君をきみと松村君にあずけましょう。皆数学の支度をして!」
と先生は方向を転換した。一同顔を見あわせた。聞きまちがいかと思ったのである。しかし続いて、
「教科書、百〇六ページ、練習題のところをあける」
ときたから、もううたがう余地がない。
「一番から十番までを内藤君と尾沢君がやる。これはふだんと違って教えあってさしつかえない。十一番から二十番までを高谷君と堀口君、二十一番から三十番までを横田君と花岡君……」
と喧嘩の時の組み合わせだった。なお、
「五時までかかってゆっくりやりなさい。私は教員室で待っている」
困った立場
昼からの課業がおわって先生が出ていったせつな、
「皆、ちょっと待ってくれたまえ」
とどなって教壇へ駈けあがったのは堀口生だった。喧嘩事件で留めおきをくってから三日目だ。堀口生は二日つづけて休んで今日また顔を出したのである。
「諸君、諸君」
一同は帰りじたくの手を休めて、迷惑そうに堀口生を見まもった。どうせろくなことでなかろうと思ったのも、こいつの日頃から察してむりはない。