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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

「いや、先生がおっしゃった。もうすこしで泣くところだったとおっしゃった。うそをついてもだめだよ」

と照彦様はすっかり本気にしていた。

正三君はあまり強がると芝居を感づかれると思ったから、時々、

「ああああ」

とためいきをついた。それに応じて照彦様も、

「ああああ」

とやる。ただしそれはほんとうの嘆息だ。

「ああああ」

「ああああ。痛い! つばをのむと痛い」

「僕もすこし痛いです」

と正三君は起きなおった。

「それみろ」

「うがいをしましょう」

「うむ、わすれていた」

と照彦様もうがいをする。

「若様、すこしお休みしましょう。寝てしまえば痛いのをわすれます」

「よわい奴だ」

「僕は口をきくと痛いんです。もう寝ます」

と正三君はそのまま目をとじている中に夢心地になった。照彦様も夕方まで眠った。

晩は牛乳と重湯だけだった。傷にさわるといけないから形のあるものはたべられない。正三君はまたありがたくないお相伴をした。やりきれないと思ったが、そこを辛抱するのが忠義というものだ。照彦様はもう痛みがとれたので上元気になっていた。

「内藤君、僕はもうなんともない」

「僕は唾をのむとまだすこし痛いんです」