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くしんのがくゆう

苦心の学友

佐々木 邦

「少年倶楽部」1927(昭和2)年10月号~1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,732 字 · 332 页

青空文庫

と尾沢生が感心したくらい堀口生の改悛は、いちじるしかった。

「おれは昨日何年ぶりかでお母さんにほめられたよ」と堀口生も得意だった。橋本先生も、

「堀口君、君は生まれかわったね。しかし数学をやってこなければいけないよ」

と時々はげましてくれる。堀口生はその都度頭をかいて相好をくずす。先生からやさしい言葉をかけられるのがうれしいのだ。しかしある時、

「先生、僕はこのごろくたびれてだめです」

と答えた。これはほんとうだった。おとなしくしているのが大きな努力だから、いまだ勉強の方までは手がまわらない。よほど気をつけていないと癖が出て、

「やい、こんちきしょう!」

なぞとやる。もっともそのすぐ後から、

「しまった。失敬、ごめんごめん」

とことわる。一度運動場で足をふんだ子を突きとばしたが、急いで抱きおこしてやって、

「失敬失敬、ごめんよごめんよ」

とあやまった。あいにく松村君や正三君が見ていたものだから、大いにあわてて、

「松村君、内藤君。ついしちゃったんだよ。けれどもいいあんばいに他の級の生徒だった」

と弁解して逃げていった。

「退校届がこわいんだね」と正三君がいった。